【2024年新年は憂慮すべき事もございます】



2024年新年は憂慮すべき事もございます


 今年の新年は、憂慮すべき事もございます。


元旦

 私は、元日の午前零時から幾つかの神社やお寺等への参拝を行いました。これは日本の風習で、いわゆる「神道」(ただし神を祀るのみならず偉人等を顕彰するなど、幅広い伝承も含みますので、本来は「古道」というべきものですが、「古道」だと日本では古くから唐国のものがよく知られており、混同を避けるために「神道」と便宜的に呼ばれていると考えられるものです。)の風習ですが、午前零時で早速に参拝というのは、近代の風習かも知れません。しかしながら、現代では神社側も、この参拝に対応しているところが多くなっています。おそらく、早朝の移動の利便性が向上した際に、伝統的な価値観から、自然と成立した風習だと考えて、好意的に受け取っています。
 幾つかの神社やお寺等に参拝いたしましたが、神道の要は、古伝承、風習等、文化的なあらゆるもの、言葉だけでは表しきれない精神性の伝承を目的とした祭りや様式美といった美意識等、精神的なあらゆるものの「伝承」であると考えている関係で、祖先に縁のある神社が主で、お寺様等にも参拝し、ご縁は薄いものの知人が崇敬会の役員を務めている神社に一緒に参拝したりして、帰宅後、年賀メールを打つなどしておりました。夜も遅くなって、報道に目を向けると、そこで石川県での震災が深刻なものである事を知りました。
 夜も遅く、この日は、公務に従事している知人達に御尽力いただけるよう連絡させていただいたのみです。


 自宅からほど近い神社ではお焚き上げも行われていました。この神社の御祭神は倭健命(やまとたけるのみこと)を祀るという説と、五十猛命(いそたけるのみこと)を祀るという説があり、倭健命は私に取っての伝承上の祖先。五十猛命は須佐之男命の御子で須佐之男命と一緒に日本の山々に植林を行なったとされる神、私は須佐之男命の子、八島士奴美神(やしまじぬみのかみ)の伝承上の子孫となるので五十猛命は祖先の兄弟という事になります。



2日

 この日は、母校の箱根駅伝応援を引き受けていましたので朝7時から応援場所に向かい、往路の応援を行いました。石川県での地震は心配でしたが、年明け早々という事もあり、他にできる事も思いつきませんでしたので、以前から面識のある現職大臣の方に会うため県外に出て、直接会って被災者の受け入れ等に御尽力いただけるようお願いいたしました。また、県外の地方議員の方からは被災者の方々がいらっしゃれば受け入れに尽力したいという旨のお返事をいただきました。


 生麦の応援場所は、あまり目立たない所ですが、今年も沢山の方が来て下さいました。



3日

 3日も生麦での応援を行い、横浜駅前担当等と合流して昼食を取りました。その後、金沢市の知人から、金沢市内でも塀や家具などが倒れる被害があったと聞きました。この日は、2日にお願いした方とは別の国会議員の知り合いにもメールで被災者対応に御尽力いただけるようお願いいたしました。


 復路で母校の陸上部様は、よく頑張って下さり、総合6位と、良い結果を出して下さいました。



4日

 朝、3日夜に御尽力のお願いをさせていただいた議員様から、「気を引き締めて働きます」とのお返事をいただきました。
 報道をみて、応援で現地入りしている消防、警察などの方々のご活躍には頭が下がる思いでした。

 友人にも阪神淡路大震災の被災地にいた方々が幾人かいますので、他人事とは思えません。



5日

 報道で、4日に愛知県、名古屋市、高山市が被災者の受け入れを決定した事を知りました。また、5日には、三重県も被災者の受け入れを決めたとの報道を見かけました。

【1月4日の読売新聞オンラインの記事】
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240104-OYT1T50148/

【1月5日の読売新聞オンラインの記事】
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240105-OYT1T50160/


6日

 埼玉県狭山市も5日に被災者の一部に住居100世帯分を無償で提供すると発表したという報道を見かけました。

【1月5日の毎日新聞の記事】
https://mainichi.jp/articles/20240105/k00/00m/040/241000c


 緊急の救助活動は極めて重要な事です。しかしながら、被災地での直接の救助というのは、投入可能な人員に限度があり、悔しい部分ではありますが、専門家でもなければ土地勘がある訳でもない私達は無力である場合が多い事は、受け入れなければならない現実です。
 しかしながら、被災者の方々の他府県等での受け入れ等の早期決定は、気休めではなく、現実に救援活動の支援となります。比較的軽度の被災者等を他府県で受けれる事は、公的救援隊と救援に参加可能な地元の人員の軽度の被災者等対応への比率を軽減し、より多くを重症者や安否不明者への対応に割り当てる事を可能にします。
 ですが、現実的な問題として、受け入れ体制が確実に保障されない限り、軽度の被災者等の対応に当たる人員を転用する決断は極めて困難です。また、被災者の方々も確実な生活再建の計画を模索する上で、良好な支援が迅速に信頼出来るものとして提示されなければ、計画が立てられなかったり、効率の悪い計画しか立てられないという事になりますし、精神的負担の大きいものにもなります。
   今回の能登半島地震では、海底の隆起や道路の損壊など輸送に関する問題が大きく「大規模な機材や人員を送る事ができない」という問題や「大規模な部隊を送っても物資の輸送が追い付かず機能する保障がない」という困難な状況が現在も続いています。
 人員や資源の最適分配という経済学的手法を最大限に活用して、現地に送る人員や物資の最適化を図るとともに、他府県で受け入れ可能な負傷者を受け入れ、居住困難者を受け入れるなど緊急性が極端に高くない事柄でも実施して、現地で対応される方々を間接的に支援し、今後、生活の不安定化により、既に被っている傷病が悪化したり、経済的困窮に陥る可能性のある方々に一刻も早く健康な生活に戻っていただくための支援も重要だと考えます。
 皮肉にも、元日には氷川神社で戦勝を祈願した平貞盛が平将門との戦いに終止符を打ち、氷川神社の分社として現在の文京区に奉納した神社に参拝し、旧知であった将門を討たなけれならなかった、私の伝承上の祖先、貞盛を思いました。(将門を討った貞盛は鎮守府将軍に任命され、貴族の地位を得ましたが、将門との戦いを悔やんでか、子弟を京の屋敷に呼び寄せて、同族争いを行わないように伝えました。察するに将門の追討は祖先の本意では無かったであろうと思い、元日には、将門様のところにもお参りした次第です。)
 箱根駅伝でも母校の陸上部様は厳しい現実を受け入れての出場でした。複雑な心境であったかとお察しいたしますが、人というのは、いつの時代でも厳しい現実を受け入れて、進んで行かなければならないものなのかも知れません。
 さて、震災に関して気になった事もありました。今回の様に、道路が損壊し、海底の隆起などの問題で大型船を直接接岸できない状況では、物資を近海に輸送し、大型ヘリコプターや小型船舶を利用して陸揚げする輸送艦、あるいは揚陸艦と呼ばれる艦艇が役に立つという事がよく分かりました。それでも物資の運搬が容易ではないのが不思議でした。どうも、自衛隊の輸送艦は僅か3隻しかないそうで、数が少ない事が問題であるようです。


 小松基地からヘリコプターで輸送艦「おおすみ」に着艦して救援物資を積んで被災地に送っているようです。荷物を積めば積むほど極端に航続距離が短くなるヘリコプターでの輸送では被災地の近くまで輸送艦で物資を運ぶ事で効率が良くなるからだと思います。

 防衛省が持つこの手の輸送艦、つまりヘリコプターや小型の舟艇の拠点として機能する艦艇の3隻というのは、他国と比較しても少ない様に思います。

満載排水量4,000トン
以上の揚陸艦/輸送艦
国民総所得1隻当たり
国民総所得
米国54隻212,866億ドル3,941億ドル
中国37隻146,237億ドル3,952億ドル
ロシア20隻(戦没艦含む)21,932億ドル1,096億ドル
韓国10隻16,504億ドル1,650億ドル
日本3隻(おおすみ型)51,564億ドル17,188億ドル

 隣国でもロシアは、大型の揚陸艦を持たない代わりに、大型ヘリコプターや装甲車等をパラシュート降下させる事の出来る輸送機を大量に保有しています。また、ヘリコプター母艦として使用可能な航空母艦等を3隻保有していました(財政難で2隻売却済)。
 もともと、この種の艦艇は強襲揚陸艦と呼ばれるもので、日本のように広い海域に沢山の島々を抱え、世界的に見ても波が高く小型船舶の運用が天候に左右されやすいという事情から、比較的波の高い外洋を大型船で航海して港の整備が不十分であったり、敵に港が制圧されてしまっている離島などに増援を送ったりする目的で、戦前の陸軍(海軍ではなくて)が確立した輸送法です。「港のないところに強襲揚陸」というと、攻撃的な響きもありますが、他国から侵略を受けたりした場合、日本では島や半島への増援や救出が必須となり、侵略側は必ず港を最初に制圧しようとするので防衛側としては重要な装備といえます。ただ、日本の陸軍が強襲揚陸艦を世界で初めて確立させた背景には、周辺海域の波が高く大型船でなければ扱い難いという事情が重要であったとは思います。戦術的というよりは気象条件に対応した船という側面もあり、もう少し多めにあっても良いのではないかと思います。
 また、自衛隊のおおすみ型は、ヘリコプター母艦に似ていますが、発着スペースは用意しても、あまりヘリコプターの運用には適していないようですので、災害派遣時に特に活躍するCH47というヘリコプターの運用に適したものが必要かも知れません。CH47は回転翼の折り畳みができないなど、艦上での運用に適さない部分もあるそうですが、回転翼の折り畳み等は確立された技術ですので製造元に依頼すれば、そういった改造型はすぐに供給されると思いますし、オスプレイという垂直離着陸機もありますが、これは先進的で複雑な機体ですので、災害派遣等では、整備や操縦が熟知されている比較的簡素なCH47の様なヘリコプターは、使い勝手が良く信頼性が高いようです。
 かつては、保守的な方にこういう事をいうと「防衛省の目的は戦争抑止であって、災害救助ではない」と反論されましたが、2022年のウクライナ侵略戦争での報道は、防衛保守派と災害派遣重視の意見を一致に導くものかも知れません。
 かつては、およそ戦いというのは、弓や鉄砲の射撃であったり、戦艦による制海権であったり、航空機による制空権であったり、特殊な技術で「まず、圧倒的に、この技術が重要だ」というものがありました。ウクライナ戦争では、戦いが多様化しており、武器や技術も非対称的で、また様々な装備、様々な水準(限定戦争、低強度紛争、情報戦、世論分断工作、残虐処刑による恐怖支配、移民戦、核兵器使用の全面戦争を仄めかす脅迫戦、市民運動偽装妨害工作、愛国運動偽装分断工作など)、「この1つが特に重要」といえる技術は、限られる様に思えます。ですが、1つだけ、どんな手段であれ、どんな水準であれ、勝敗に影響を与える共通する要素があります。それは「チームワーク」です。
 チームワークは、災害派遣では顕著に重要です。ですから、防衛省も災害派遣を正式な任務の1つとして確立すべきだと思いますし、災害派遣において優秀なチームワークを持つ国に対して、少なくとも装備以外で優位に立てると考える他国は存在しないと思います。つまり、これは抑止力となり得ます。




2024年1月13日 
日本トーマス・シェリング経済学協会 中村寿徳 





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